日本天文学会1999年春季年会V20a


すばるファーストライト-VIII.
MIRTOSによるファーストライト

地上観測機器:すばる望遠鏡、中間赤外線撮像装置、2波長シフトアンドアド

我々は、すばる望遠鏡を用いた中間赤外線での回折限界の撮像をするため、 中間赤外線試験観測装置MIRTOSの製作・調整を進めている。 この装置は、近赤外線(波長1umから5um)と 中間赤外線(波長10umと20um)の2つの撮像光学系からなる。 2つの光学系は、視野を共通に持ち、 大気のゆらぎによる星像の動きの速さよりも短い積分時間で、同時に撮像を行う。 このようにして得られた多数の同時撮像結果より、 近赤外線の参照用の点状天体の位置を検出してその動きをもとに 中間赤外線で星像の移動と加算を行う。 これは、我々が開発した、2波長シフト・アンド・アドと呼ばれる観測手法で、 点状天体の豊富な近赤外線を参照することによって、 中間赤外線でひろがった天体の空間構造を、 回折限界の空間分解能をたもったまま長時間積分することができる。 中間赤外線撮像光学系は、検出器に320x240ピクセルの Si:Asアレイを用い、ピクセルスケールは0.067秒角、視野は21x16秒角である。 このピクセルスケールは、8メートルクラスの望遠鏡に取り付けられる 中間赤外線撮像装置のなかでもっとも小さいものである。 近赤外線撮像光学系は、検出器に256x256ピクセルの InSbアレイを用い、ピクセルスケールは0.028秒角、視野は7.1x7.1秒角である。 近赤外線撮像光学系の視野は、 中間赤外線撮像光学系の視野の隅に配置されている。 これにより、近赤外線・中間赤外線の同時撮像だけでなく、 参照天体から比較的離れた観測天体にたいして 2波長シフト・アンド・アドが可能である。 MIRTOSは、すばる望遠鏡のカセグレン焦点小型観測装置自動交換機構CIAX-3に 搭載される。 望遠鏡への機械的なインターフェースやソフトウェアのインターフェースを 確立するため、本装置にはさまざまな工夫がなされている。


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